Paisley Poodle Records

音楽制作系の雑記・備忘録 etc...

【DTM・DAW・プラグイン】Waves REDD.37-51


○はじめに

まずこのブログを立ち上げようと思ったきっかけになったのが、今回の記事であるプラグインの挙動に関することです。
もちろん僕以外の器用で分析力の優れた方々が多数こういったトピックの記事を投稿されていることは存じ上げております。僕自身もお世話になることが多いです。
しかし僕が知りたい辺りまで掘り下げられていないものも散見されるのが実情です。(僕のリサーチ・検索下手に依るところもあるのかもしれませんが...)
特に今回取り上げるような、いわゆる"アナログエミュレーション"ものに関して掘り下げることはおそらく物好きというか、ジャパニーズ・オタク・スピリットをお持ちのニッチな方でないとしないんじゃないかな、と思います。
実際どうかは置いておきまして、この辺の情報は"アナログエミュレーション"系以外のものよりも薄いと感じました。この記事は僕がこうして拙い形ながらもアウトプットすることにより先人たちをうまく補完できたならそれでどなたかの力になれるかもしれないし、それによって自分自身の理解も深まるだろう、というような考えのもとに比較・検証し、投稿するものです。

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REDD.37-51




今回はREDD37-51にサイン波、ピンクノイズのいずれかを適宜REDDをインサートしたAUXトラックにセンドし、Voxengo SPAN(スペクトラムアナライザー)で分析した結果です。



●GAIN・DRIVE・AMP TYPE

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だいぶ突っ込んでいるとき


GAINはインプットゲインで、DRIVEは歪みの量を決めるノブです。
サイン波をGAINノブで突っ込んでいくにつれて60Hz~70Hzあたりから低音のノイズが出現します。(実機のDCノイズの再現という説があるようです)
DRIVEのノブを上げていくことでも低音ノイズは増加します。
基音から上の倍音(以下上方倍音)もDRIVEの数値に比例して上がっていくものの、アナログコンソールをシミュレートしたものであるせいか倍音の出方のバランスを保ったままリニアに上がるわけではありません。
低音ノイズは37の方が51よりも少し多いのですがDRIVEの数値によってある地点(入力される信号によって上下する)からそれが逆転します。
DRIVEを上げすぎないでカジュアルに使うようなときの上方倍音は37の方が豊富。逆に思い切りDRIVEを上げてよりアグレッシブに歪ませるときは、これもある地点(入力される信号によって上下する)から51の方が豊富になります。この辺は使い分ける価値がありそうです。


●CHセクション
37の方は場合は、IよりⅡの方がほんの少しだけ倍音が増えますが、本当に僅かです。いずれも増える帯域とその量は同じくらいです。(後日再検証したときにはどこが増えているのかもよくわからないくらい微々たる程度)
51の場合はⅠよりⅡのほうが低音ノイズが少し増えます。こちらは知っておいた方がいいかもしれません。特にキックやベースにインサートする場合はこれを加味しないとマスキングされてパワー感が薄れる可能性があります。もっというと万全を期すならばしっかりローエンドを再生させたいトラックにこのREDD.37-51は適さないかもしれません。
上方倍音の変化は37のように僅かに変わる程度なので余程こだわらない限りは気にしないでもいいレベルかと個人的には思います。


さらに後日検証で興味深い点に気がつきました。

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赤がMid、アンダーレイされている緑がSide

ご覧の通り、左右のCHを合わせないとSide成分が出現するのです。(位相の問題でしょうか?その辺はまだあまり詳しくありませんのでご了承を...)これは実機でもそうだったのでしょうか。それを知っているのは現在所有しているというLenny Kravitzと彼の手に渡る以前にそれを使い倒していた人たちのみ...。今では各プラグインでM/S処理・加工が簡単にできますので敢えてこのREDD.37-51に頼ることもないのかもしれませんがSideにもMidと同じように綺麗に倍音が付加されるので、それを知って使うならば有効に働く場面も無くはないかもしれません。ちなみにこの効果が現れるのはSPREADスイッチがST、DUOの場合です。
MS
モードで似た効果を得たいときはAMP TYPEを合わせないことで得ることができます。


●SPREAD
STEREOでは各コントロールがLRでリンクされた状態になります。DUOではそのリンクが外れてLRを分けてコントロールできます。MSではMidとSideに分けてコントロールできます。


●BASS LIFT
左にスイッチを合わせるとBASS LIFTモードになり、200Hzあたりからシェルビングで持ち上がります。マニュアルによると9db。真ん中はバイパスで、右は10dbのPadです。


●EQセクション
CLASSICモードのTONE HIGHは10kHzのシェルビングTONE LOWは100Hz以下のシェルビングでブースト・カット。

POPモードのTONE HIGHは5kHzのピークブーストで、なぜかカット方向に動かしたときは10kHz以上のシェルビングカットになります。僕程度ではなぜそうなったのか理解が及びませんがなにか合理的な理由があるのかもしれません。
カットした場合をアナライザで見るとCLASSICPOPのいずれも1kHzあたりから下り坂になっていますがカーブが少し違いました。POPのほうがCLASSICよりも1~12kHzぐらいまでの帯域を多めにカットするようなカーブシェイプです。


●MONITOR
MONITORは読んで字のごとくSTEREO、MONO、L、Rのどれをモニタリングしたいかを選べるスイッチです。


●ANALOG

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低域と中高域が目立つようなノイズ。

ANALOGノブはノイズ(おそらくアナログコンソールが出すものなのでしょう)をどれだけ付加するかを調節します。当然ながらあまり付加しすぎると悪影響を及ぼすと思いますが、個人的にはこういったノイズはセッションにムードやら空気感やらを与えてくれると思うので好きです。もちろんそぐわないようなムード・空気感ならば足す必要はないわけですが。


●OUTPUT
アウトプット。




○あとがき

初めてこういうことをやってみたわけですが、自分なりにでもしっかりやってみると記事を一つ書くだけでも結構エネルギーを使うんだな、と思いました。そしてそのエネルギーは、見る側にはほぼ無関係だというのもまた現実の厳しいところです。
そんなことはどうでもいいとして、Abbey RoadといえばThe Beatles
The BeatlesといえばGeorge Martin。そのGeorge Martin卿の本で彼は音楽制作をケーキ作りに例えていました。重ねるに従ってバランスを崩しやすくなるから一段一段を丁寧に積み重ねていくのだ、と。おそらくこのコンソールをいじりながらそんなことを思った瞬間があったんだろうなぁと思い耽ったのでとても印象に残っています。綺麗なお皿、しっかりしたスポンジにふんわりと仕上げた生クリーム、外周には優雅なデコレーション...
ーーーーケーキを焼いたことはないのです...。

僕はこのREDDシリーズをよく使います。手に入れてからはどのセッションでも使っています。おそらくハーモニクスを付加する用途で使う方が多いと思いますし、僕自身もそうです。しかし倍音っていうのは僕にはまだ難しいです。概要を掴み切れていません。いろんな人が倍音を足すと音が太くなる、抜けがよくなる、なんていうものだからそれを鵜呑みにしてやってきました。初めの頃よりはわかるようになってきた気はするけれども、それでもまだ全然分かっていないんだと思います。確信をもって使っているか?と訊かれたら自信はないのが正直なところです。「ミックスは耳でやれ!」なんていう提言がミキシングビギナー達の肩を威圧的に叩いてまわっています。それが理想なんだとは思うし、そうできたらかっこいいです。ゆくゆくはそうなっていきたいので普段から最終的には耳での判断をするようにしてはいますが、まだまだでしょう。
なもんで少しでも理解している箇所を増やすことでアドバンテージを稼いでいこうと思って今回の記事を書いてみました。

今回はREDD.37-51だったので次回は同じREDDシリーズのREDD.17について書いてみたいと思っています。最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。


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